2012年4月21日土曜日

シェイクスピア劇oの弟どこ芸術汝


ブログテーマ[シェイクスピア]|Pの食卓

前回に引き続き、『ロミジュリ』。

今回はさらにメインのプロットである二人の愛とその解決について考える。

周知の事実の通り、ロミオは開幕早々恋の病に取り付かれている。

適わぬ恋の相手はキャプレット家のロザラインだ。

ロミオのロザラインに対する愛には特徴がある。以下ロミオ

 Why then, O brawling love, O loving hate,  ああ、喧しい恋、恋の憎しみ

 O any thing of nothing first create!       ああ、無から作られた最初のもの

 O heavy lightness serious vanity,        ずしりと重い浮遊感、重大な無価値

 Misshapen chaos of well-seeming forms,   形の整ったはっきりしない混沌

 Feather of lead, bright smoke, cold fire, sick health, 鉛の羽、輝く煙、冷たい炎、健やかな病

 Still waking sleep, that is not what it is!    起きながらにして寝ている、それだけじゃない!

 This love feel I, that feel no love in this.    そんな愛を僕は感じている。でもその中に愛は無い。

 Dost thou not laugh?                なんだ笑わないのか?

               (1.1.167-74)

笑わないわけがない。

「鉛の羽」や「冷たい炎」など相反するイメージを形容詞で飾ることを撞着語法(oxymoron)という。

ロミオの心理状態を的確に表しているといえる。

一見ロザラインという女性に恋しているようで、実際は恋に恋しているという状態だ。

このセリフはロミオがジュリエットの前に恋を経験している、ということを作者が観客に説明しているにすぎない。

そうすることで、ジュリエットへの愛がいかにロザラインへの愛と違うかが浮き彫りになる

一方ジュリエットはというと、社交界デビューの14歳の乙女。

まだ恋はおろか、世間の男性というもの自体にあまり知らないと仮定できる。

親の決めた婚約者パリスと仮面舞踏会で初めて出会うようセッティングされている。

幸いパリスは若者だ。(若い娘の求婚者は50目前のおじさんが多かった。c.f. じゃじゃ馬ならし)

当然のことながらジュリエットは期待と不安の入り混じった心持で舞踏会を待っている。

ジュリエットにとっては自分の将来を決定する舞踏会なのだ。

悲恋を紛らわすためのロミオの舞踏会参加とは意味合いが根本的に違う。

ここまででロミオの恋愛感、ジュリエットの恋愛感をまとめてみる。


ここで、iは、ニール·サイモンによるスクリプトの噂を読み取ることができます

ロミオの恋愛感は、この時点では、自己陶酔につきる。

恋に恋し、相手を熱烈に愛することで満足を得ているのだ。

現代の高校生の恋と差異はあまり無い。


マット·アドラーが誰と結婚している?

それに対しジュリエットの恋は既に結婚の段階に置かれている。

処女性や貞淑さが女性の美徳であった時代のため、

高貴な女性が不特定多数の男性と触れ合うことはできないのだ。

(一般においてはその限りではなく、異例はあったようだ。)

つまり恋愛ゲームに興じている暇は無く、一目で相手の本質を探り

一矢で決断を下さなければならない真剣勝負なのだ。

そのことについてはレイディキャプレットが本のイメージを使いソネット形式で述べている。(1.3.80-95)

少し余談として当時の結婚について述べる。

ジュリエットのような上流階級にある女性にとって結婚とはビジネスでしかない。

本人の恋心とは別の次元で結婚の段取りが進められていくからだ。

家の都合、とくに父親の都合、により、金持ちで地位もあり自由に財産を使える男と結婚させられる。

そのような好都合な男とは、大抵の場合は老人だ。(c.f.じゃじゃ馬ならし)

さて本題Loveについて戻る。

Love storyにはpaganなイメージが付きまとう。(pagan=異教徒的)

つまり不倫ものが多い。

アラブや東洋の価値観がキリスト教の価値観に流入しているのだ。

つまりトルコのアナトリア高原で興ったメヴラーナ教、バルカン半島でパウロ派の影響のもと興ったボゴミル派(異端キリスト教)、古代ギリシャのオルフェウス教、ゾロアスター教(イラン)、景教(異端キリスト教:イラン―中国)これら二元宗教の根本的な思想、「二元論」に近いものがある

二元論とは、大雑把に言えば、世の中のものは「善と悪」「光と闇」や「完全と不完全」など対立しあう関係でなりたっているというものだ。

そしてその二元宗教の説くところをつきつめれば、決して現世において救われることは無いということだ。

Love story には常にそのような観念が付きまとっている。

ロミオとジュリエットに関してもChristismではなく異教徒的なイメージがある

二人は仮面舞踏会で出会い、お互いに強く惹かれあうようになる。以下その部分


何ヘンゼル& gretal家は次のようになりました

Romeo: [to Juliet] If I profane with my unworthiest hand         A

          (ジュリエットに向かって) 僕の卑しい手が

           This holy shrine, the gentle sin is this,                    B

           聖なる堂をけがすなら、優しい罪はこれ。

           My lips, two blushing pilgrims, ready stand              A

           僕の唇は赤面した二人の巡礼、こうして立ち


ここで、iは、サイレント映画を見ることができます

           To smooth that rough touch with a tender kiss.         B

           手荒に触れたところを優しいキスでそっと。

Juliet: Good pilgrim, you do wrong your hand too much,           C

           巡礼さん、あなたの手をそんなに悪く言わないで

           Which mannerly devotion shows in this,                  D

           礼儀正しく信仰を示していらっしゃるわ。

           For saints have hands that pilgrims' hands do touch,  C

           聖者の手は巡礼の手が触れるためにあるの。

           And palm to palm is holy palmers' kiss,                  D

           だから手のひらを重ねることは、巡礼の口付けよ。

Romeo: Have not saints lips, and holy palmers too?              E

           聖者も巡礼も唇を持っているのでは?

Juliet: Ay, pilgrim, lips that they must use in prayer.              F

           ええ、巡礼さん、お祈りを唱えるためにね。

Romeo: O then, dear saint, let lips do what hands do.             E

           それなら、いとしい聖者様、唇にも手のひらがすることをさせてください。

          They pray, grant thou, lest faith turn to despair.          F

           お祈りします、お聞き入れください。信仰が絶望に変わらぬよう。

Juliet: Saints do not move, though grant for prayers' sake.      G

           聖者は動じません。お祈りを聞き入れても。

Romeo: Then move not while my prayer's effect I take.          G


ここで、マイケル·マイヤーズマスクの概念がなかった

           では動きませんよう。お祈りの験を受け取るまで。

          Thus from my lips, by thine, my sin is purged.            A         [ kissing her ]

           こうして僕の唇から、あなたの唇によって、罪が清められた。 (彼女にキスする)

Juliet: Then have my lips the sin that they have took.            B

           では、私の唇が罪を受け取ってしまったのね。

Romeo: Sin from my lips? O trespass sweetly urged!             A

           僕の唇から罪が?ああ、なんと素晴らしい罪の咎め

          Give me my sin again. [ kissing her again ]

           もう一度罪をお返しください。

Juliet:                               You kiss by th' book.               B


どのように私はXファクターであることを得るか

           お手本通りにキスなさるのね。

                                                         (1.5.92-109)

長くなってしまったが、以上が有名な舞踏会でのソネットの場面だ。

セリフ横に置いた大文字のアルファベットは韻の踏み方を示している。

ABABと韻を踏み、最後にGGといったカプレットという形で14行を〆るのがソネットだ。

お互いが互いにセリフを言い合い、相手のことを品定めしている

高次元な wit combat といったところかもしれない。

このGGのカプレットが終了した瞬間、二人の恋は約束されたものとなる

ロミオは真実の恋とその対象を手に入れ、

ジュリエットは未来を賭ける相手を見つける。

このソネットから宗教的なイメージを抜きにしたら何も残らない

ロミオもジュリエットも唇や手を巡礼者と例え、

愛を信仰になぞらえている。

男女の下世話な情事になりかねないシーンを、

聖性を帯びた愛へと飛翔せしめ、聞くものの耳に心地よく響く。

ロミオもジュリエットもキリスト教から一時脱却し、愛の宗教へと改宗したのだ。

このChritisismからの脱却により、終幕における教会内での自殺が正当性を帯びる。

キリスト教、カトリックにおいて、自殺は禁忌とされる。

しかし、先に述べたように、二元宗教的な観念を持つ恋の宗教を信仰する彼らには、


死こそ愛の成就であり、生きているうちは達成され得ない愛の合一なのだ。

悲劇的だ。しかしそこには救いがある。

四大悲劇といわれる『オセロー』『マクベス』『リア王』『ハムレット』とは決定的に違う、

ある種の解決があるのだ。

ロミオはジュリエットとであったことで、急速に成長を始める。

時間の経過の遅さについて、ロミオはこう述べている。

Not having that, which, having, makes them short.

手にしていないからね、あれを手にしたら短くなるのに。

(1.1.155)

本人が言っているように、ジュリエットとの両想いの恋を手に入れた瞬間から、

ロミオの時間の経過は加速度的に速まる。

まるで流れ星が引力に引かれ地球に落ちるかのように、

ロミオとジュリエットは破滅へと急進していく。

前回にも述べたが、シェイクスピアが五日間に凝縮させた意味が伺い知れる考えだ。

ロミオとジュリエットは五日間にして全人生を経験し、

恋の宗教という解決の下、短い人生を終えるのだ。

『ロミオとジュリエット』を観る機会がありましたら、

彼らがいかにして燃え尽きたかをcompassionを持って観ていただきたいです。


そうすればメロドラマではない深い人間愛を垣間見ることができると思います。

以上をもってロミジュリのメモは一度止めておきます。



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